【新しく住む予定の家は水洗トイレですか?】
人が生活する家は電気・ガス・水道がないと困ります。しかし、あって当たり前のように思えるこれらの設備も、日本全国でみれば100%完備されている訳ではありません。新しい家を購入してから後悔しないためにも、事前に確認しておくことは重要です。そこで、今回は下水道について普及率を調べ、地域ごとの特性を確認してみました。
●下水処理人口普及率の全国平均は78.8%
住宅等から出る排水には雨水を処理する雨水、トイレの排水を処理する汚水、キッチンやお風呂の排水を処理する雑排水があり、一般的には何れも下水道管を通って処理されます。下水道が整備されていることで街は清潔になり、豪雨があった時には浸水から守ります。下水道の整備状況は地域によって差があり、浄化槽で汚水等を処理する地域もあります。まずは都道府県別の下水道処理人口普及率の違いを表にしてみました。
都道府県別下水道普及率
資料:日本下水道協会「下水道処理人口普及率(平成29年度末)」
日本全体の下水道処理人口普及率は78.8%で、100人中約79人が下水道の整備された環境にいます。ただ、上水の普及率に比べたら20%ほど低く、都道府県によってもかなり大きな差があります。
下水道の普及率が最も高いのは東京都の99.5%で、限りなくほぼ全域整備されています。2番目に高いのが神奈川県の96.7%、3番目が大阪府の95.8%となっており、人口の多い順に並んでいます。人口が多いと効率良く整備できるのかもしれません。一方で普及率が低いのは徳島県(18.1%)、和歌山県(27.3%)、高知県(38.0%)等で、東京都等とは非常に大きな差があります。
●首都圏の普及率は東京が高く千葉が低い
続いて首都圏の状況をもう少し細かく知るために、一都三県(埼玉県・千葉県・東京都・神奈川県)の下水道普及率を区市町村ごとに確認してみました。普及率の高い・低い市町村は主要都市に記載の市町村を除いて載せています。
埼玉県の市町村別下水道処理人口普及率
資料:日本下水道協会「下水道処理人口普及率(平成29年度末)」
埼玉県は下水道普及率が80.8%で、千葉県よりは高いものの東京都よりは20%近く低くなっています。志木市(99.5%)や富士見市(98.2%)はかなり普及率が高いですが、県庁所在地のさいたま市は92.9%、川口市も86.8%で、主要都市だから普及率が高いと言うことでもないようです。ときがわ町や小鹿野町等は下水道を整備する予定がないので、現在も将来も普及率は0%と言うことになるのでしょう。
千葉県の市町村別下水道処理人口普及率
資料:日本下水道協会「下水道処理人口普及率(平成29年度末)」
千葉県は下水道普及率が74.2%で隣接する埼玉県や東京都より低く、全国平均も下回っています。千葉県は水道(上水)普及率も全国平均以下なので、上下水道の整備に関しては、東京都や埼玉県に比べて遅れていると言えます。
千葉県内で普及率が最も高いのは浦安市(99.6%)、次が千葉市(97.3%)、その次が習志野市(94.8%)となっています。地理的には何れも京葉地域にありますが、同地域の市川市(73.1%)や船橋市(85.9%)は高くないので、地域性や人口規模よりも財政面の差の方が影響しているのかもしれません。千葉県内には勝浦市のように整備予定がない市町村が19もあります。想像以上に多いですが、地域ごとの事情を加味し、それぞれの住民が納得して最適な方向性を決定したのでしょう。
東京都の区市町村別下水道処理人口普及率
資料:日本下水道協会「下水道処理人口普及率(平成29年度末)」
東京都は全国で一番普及率が高いので、23区は惜しくも99.9%ですが、多摩地区は26市のうち18市が100%となっています。ただ、島しょでは新島村を除いて整備予定無しとなっています。限られた島の人口や世帯で下水道を整備していくのは大変なのでしょう。
神奈川県の市町村別下水道処理人口普及率
資料:日本下水道協会「下水道処理人口普及率(平成29年度末)」
神奈川県も下水道普及率は96.7%と東京都に次いで高く、逗子市(100%)や横浜市(99.9%)のように普及率の高い市町村が数多くあります。ただ、真鶴町(17.7%)や箱根町(54.7%)等の観光に強い市町村では普及率の低さが目立ちます。真鶴町の売り物件をみたら、下水道は全て個別浄化槽になっていました。
人口が減少している日本では、下水道網を新たに整備し、それを維持管理していくことはコスト的に大変になってきています。下水道と浄化槽のどちらの方が住民にとって良いかは、コスト面が大きく関係します。浄化槽だと設置するスペースが必要になり、定期的にメンテナンスを依頼する煩わしさがあるので、同じコストであれば下水道使用料を払って下水道を利用する方が良さそうです。しかし、下水道網や処理施設等が寿命を迎え、税金で更新費用を賄っていくとなると、人口が少ない地域や減少している地域では負担が増し、下水道の普及率が高いことはマイナス要因になっていく可能性もあります。それぞれ地域の実情にあった最適な方法で維持していってほしいものです。
もし住む場所を選べるなら、下水道が整備された地域か浄化槽を利用する地域か事前に確認し、それぞれどのくらいのコストがかかりそうなのか比較してみると良いでしょう。
松浦建二(CFP ®認定者・1級FP技能士)
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