【通勤時間を知ってマイホームを考える】
新型コロナウイルス感染症の影響で、自宅で仕事をする人が増えていますが、そうではない通常時の通勤時間はどのくらいが平均なのでしょうか?自分の通勤時間は長い方なのか短い方なのか、マイホームを選ぶときはどのくらいが妥当か等、通勤時間の目安として参考になるのではないかと考え、調べてみました。
●持ち家の場合の通勤時間は48.7分
通勤時間の調査は、総務省が「住宅・土地統計調査」で5年毎に実施しています。通勤時間とは、普段利用している交通機関(徒歩・バス・鉄道等)による、自宅から勤め先までの通常の片道通勤所要時間のことです。ここでの通勤時間は関東大都市圏(中心市をさいたま市、千葉市、東京都特別区部、横浜市、川崎市、相模原市とした都市圏)の場合で、持ち家と持ち家以外に分けて確認しています。
一つ目のグラフは持ち家の場合の通勤時間です。過去との違いを確認できるよう10年前と20年前も載せています。
資料:総務省統計局『住宅・土地統計調査』(平成10年・平成20年・平成30年)
平成30年(2018年)の調査結果によると、通勤時間の中位(中央値)は48.7分となっています。平成20年(2008年)に比べて1分強しか短くなっていませんが、平成10年(1998年)と比べると12分弱も短くなっています。平成10年から平成20年にかけて、通勤時間が大幅に短縮しているのは、主に不動産バブルで郊外へ移っていった自宅が、都心回帰により再び勤め先の都心へ近くなったのではないかと考えられます。仮に自宅から駅までと駅から勤め先までの徒歩時間を15分とすると、電車に乗っている時間は45分から33分へ短縮されます。イメージとして中央線で新宿駅まで通勤するとしたら、平成10年は八王子駅から、平成30年は立川駅から通勤ということになります。結構な違いです。
通勤時間で最も多いのは30分~1時間未満で、全体の35.2%を占めています。平成10年の時は1時間~1時間半の方が多かったですが、逆転しています。また、15~30分未満の人が増えて、1時間半以上は半減しています。
●持ち家以外の方が通勤時間は8分も短い
次に持ち家以外の人の通勤時間をグラフにしてみました。
資料:総務省統計局『住宅・土地統計調査』(平成10年・平成20年・平成30年)
通勤時間の中位(中央値)は40.1分で持ち家(48.7分)より8.6分も短くなっています。住宅ローンを借りることがなく、住みたい場所に気軽に住めることから、勤め先に近い場所を選んでいる人が多いのでしょう。平成10年と比べて7.8分短くなっていますが、平成20年とは同じなので、これ以上近くするのは難しそうです。
この統計上の世帯数は、持ち家が平成10年の384万世帯から平成30年には405万世帯へ21万世帯増えています。その一方で持ち家以外は369万世帯から270万世帯へ99万世帯も減っています。この20年間は低金利等の影響で、マイホームをとても所有しやすい時代だったのかもしれません。
●札幌都市圏の通勤時間は30分未満で関東とは大違い
最後に他の都市圏との違いから首都圏(関東大都市圏)の現状を確認するため、札幌都市圏を確認してみました。下記のグラフは札幌都市圏の通勤時間(平成30年)です。
資料:総務省統計局『住宅・土地統計調査』(平成30年)
札幌都市圏の場合、通勤時間の中位は持ち家が29.3分、持ち家以外が24.4分で、関東大都市圏よりも持ち家で19.4分、持ち家以外で15.7分も短くなっています。先ほどの新宿に通勤するイメージだと、徒歩の時間を除けば電車に乗っている時間は僅か14分と9分です。14分だと荻窪、9分だと高円寺あたりになります。住めるものなら住みたいですよね。関東大都市圏では何年たっても同じようにはならないでしょうが、通勤時間は短いに越したことはありません。
関東大都市圏でこれから新しいマイホームを探す人は、通勤時間を1時間以内にはしたいところです。30分以内でも30%いるので可能ならここに入りたいですが、1時間半を超えると、今では数パーセントしかいない存在なので、勤め先でも変に気を使われるかもしれませんよ。
松浦建二(CFP ®認定者・1級FP技能士)
青山学院大学非常勤講師/FPとして個人向けや中小法人向けコンサルティング業務やFPに関する講演・執筆を主に、金融商品の販売代理業務等を行っています。各メディアにて取材協力も行っています。
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