【130ヶ月以上も転入超過を続ける驚異の埼玉県!】
多くの都道府県では人口減少による過疎化が心配なのに、埼玉県は130ヶ月以上にわたって人が他県から流入し続けています。何故それほどまでに流入してくるのか、東京都以上の安定感を誇る驚異の実態を統計で確認してみました。
●東京都は12年間で83万人の転入超過
総務省統計局の人口推計によると、2020年1月1日現在の日本の人口は約1億2602万人です。12年前の2008年1月1日は約1億2779万人なので、この間に約177万人も減っています。人口減少時代に突入している日本ですが、一部の都道府県では今も人口が増えています。都道府県別の人口は出生や他県からの転入等で増えますが、東京都では転入による増加が目立ちます。2008年1月から2020年12月までの12年間(144ヶ月)では、転入超過数が約83万人にもなります。12年間を月ごとに調べてどのような要因があるのか探ってみました。転入超過数は「他県からの転入者-他県への転出者」で、国外への転出や国外からの転入は含めていないので、全国の転入超過数の総数はゼロ(転入と転出の計が一致)になります。
資料:総務省統計局『住民基本台帳人口移動報告』(2008年1月~2019年12月)
グラフは一番上が2008年1月、一番下が2019年12月で144ヶ月並んでいます。転入超過数は下部左の方にゼロの目盛があり、これより右側は転入超過数がプラスで、左側は転入超過数がマイナス(つまり転出超過)を意味します。
12年間(144ヶ月)で共通しているのは、毎年3月と4月の転入超過数が特に多いことと、ほぼ一貫して毎月転入超過状態にあることです。144ヶ月の間で転入超過数がマイナスなのは僅か8ヶ月しかなく、2011年7月に1,003人のマイナスを記録したのを最後に、2019年12月まで常に転入超過状態で、他県から人々が流入してきています。既に2020年2月まで発表済みですが、転入超過が103ヶ月連続で現在も継続中です。
東京都の場合、死亡が出生を上回っていることで自然減ですが、企業や大学等が多く立地していることにより全国から多くの人を集めて大きな社会増となり、何とかまだ人口増加を保っています。
●埼玉県の転入超過は東京都を上回る139ヶ月継続中!
次に同じ調査方法で埼玉県の転入超過状況(社会増減)を確認してみました。実はもともと東京都の転入超過の継続状況を知りたくて毎月分を調べたのですが、統計に埼玉県・千葉県・東京都・神奈川県と並んでいて、千葉県や神奈川県は時々転入超過数がマイナスになるのに、埼玉県はどの月もプラスなのに気が付き、途中からは東京都以上に埼玉県が気になり、改めて最初から調べなおしてしまいました。
資料:総務省統計局『住民基本台帳人口移動報告』(2008年1月~2019年12月)
グラフは東京都と同じく2008年1月から2019年12月まで144ヶ月並んでいます。下部の転入超過数の目盛りは東京都よりも小さく、1ヶ月当たりの超過数は最大でも7,772人で、東京都の最大40,230人とは大きな差があります。12年間の合計でも転入超過者数は約22万人で東京都の1/4程度しかありません。しかし、少ないながらも毎月転入超過状態を続けており、転入超過数がマイナスになったのは2008年7月の一度しかありません。それも僅か99人のマイナスです。2008年はリーマンショックがありましたが、9月なので直接の影響はなさそうです。2008年8月以降は再び転入超過状態を続けており、最新発表の2020年2月まで139ヶ月継続中です。
埼玉県は千葉県や神奈川県と比較されることも多いですが、埼玉県だけ何故10年以上にわたって転入者が転出者を上回り続けているのでしょうか。偶然の部分が大きそうですが、本当の理由は謎です。
●2020年は人の移動において時代の転換期になるかもしれない
日本全体の人口は減りながらも、東京都や埼玉県は他県からの流入によって転入超過を続けてきました。しかし、埼玉県の人口は2020年3月まで現在4ヶ月連続で減少しています。自然減が社会増を上回るようになってきたことを意味します。また、2020年は新型コロナウイルスの影響で様々な活動がストップしてしまっています。今後、在宅ワークが増えて職住近接の必要性が減り、住まい選びの考え方が変わっていくかもしれません。時代がどのように変化するのか、自分の目でしっかりと確認していきましょう!埼玉県がどこまで記録を継続していくかも見届けましょう。
松浦建二(CFP ®認定者・1級FP技能士)
青山学院大学非常勤講師/FPとして個人向けや中小法人向けコンサルティング業務やFPに関する講演・執筆を主に、金融商品の販売代理業務等を行っています。各メディアにて取材協力も行っています。
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