【コロナウイルスの影響で人の移動が大きく変わるかもしれない!?】
新型コロナウイルス感染症の拡大により、一部の都道府県では緊急事態宣言も出て、国民は不要不急の外出回避を求められています。この状況では引っ越しを伴うような人の移動にも大きく影響を及ぼしそうです。今後の住まい方の参考になるのではと考え、変化が統計に表れる前に、まずは過去の移動者の状況を確認してみました。
●移動者数は3月と4月だけで年間の1/3
進学や就職、転勤等でいつの時代も多くの人が引越しを伴う移動をしています。月や年によってどのような傾向があるのかを知るために、総務省統計局の住民基本台帳人口移動報告から10年分の結果を確認してみました。下記のグラフは、2010年1月から2020年2月まで122カ月の全国の移動者数を並べたものです。
移動者は都道府県内移動者数と他都道府県との移動者数の合計で、国外からの転入者および 国外への転出者は含まれていません。災害等の影響を受けて被災地から避難した人の移動については,避難先の市町村に転入届出があった人のみ移動者に含めています。
資料:総務省統計局『住民基本台帳人口移動報告』(2010年1月~2020年2月)
移動者数には毎年非常にわかりやすい傾向があり、3月と4月の移動者数が他の月と比べて突出して多いです。例えば2019年は3月の移動者が910,007人で最も多く、次に移動者が多いのは4月の767,021人となっています。3番目に多いのが8月の418,590人なので、3月と4月はその他の月と2倍前後の差があります。年度替わりの3月と4月は就職や大学入学、転勤等により多くの人が新しい環境で生活を始めるので、想定通りの傾向と言えます。引越し業者は毎年この2ヶ月が勝負ですね。3月と4月以外の10カ月については、あまり大きな差はありません。
●2011年春の移動者数の減少は東日本大震災の影響か
次に2010年から2019年までの10年間で、年によって移動者数に大きな変化がないかを確認するため、先ほどのグラフを1年ごとに折れ線で重ねてみました。
資料:総務省統計局『住民基本台帳人口移動報告』(2010年1月~2020年2月)
移動者数は10年間毎年同じように推移しています。同じ人が毎年同じ時期に移動することはほとんどないでしょうが、日本全体でみれば、毎年同じような結果になっています。ただ、2011年は東日本大震災の影響からか、3月の移動者数は前年より6万人少なく、4月は10年間で最も少なくなっています。
10年間の平均値を月ごとに計算すると、1月が31.2万人で最も移動者数が少なく、3月の約1/3の水準です。
●年間の移動者数は年々増えている
最後に月ごとの移動者数を年単位で合計して、移動者数の推移を確認してみました。
資料:総務省統計局『住民基本台帳人口移動報告』(2010年1月~2020年2月)
2010年から2019年までの10年間のうち年間移動者数が最も多いのは2019年で、延べ540万人にもなります。2番目に多いのは2015年の538万人で、逆に最も少ないのは2012年の502万人、次に少ないのは2011年の504万人となっています。2015年を除けば2012年を底に移動者数が年々増加しています。東日本大震災からの復興により、徐々に人の動きが活発になっているのかもしれません。
●新型コロナウイルスの影響はどこまで出るか要確認
2020年の移動者数は2月まで発表済み(4月10日現在)で、2ヶ月とも前年比でやや減っています。新型コロナウイルスの影響は統計上ではまだ表れていなく、3月以降で驚く数値が出てくるかもしれません。緊急事態宣言が出るほどの状態であれば、転勤による移動等に影響がないとは考えられません。在宅ワークが広がれば、働き方自体が変わっていく可能性もあります。
マイホームや不動産投資を考えるときには、時代の変化に合った選択をすることがのぞましいです。人の動きにも着目してみると良いかもしれません。今後の発表を注視していきましょう。
松浦建二(CFP ®認定者・1級FP技能士)
青山学院大学非常勤講師/FPとして個人向けや中小法人向けコンサルティング業務やFPに関する講演・執筆を主に、金融商品の販売代理業務等を行っています。各メディアにて取材協力も行っています。
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