【国土交通省 マンションの修繕積立金ガイドライン改定】

コラム マンション 管理


2021年9月、国土交通省は修繕積立金に関するガイドラインの改訂版を公表しました。
今回は、修繕積立金に関するガイドラインの変更点や見方を中心に解説します。

なお、機械式駐車場部分の修繕積立金についての記述は省略します。

 

資材、人件費の高騰の影響が物件価格だけでなく管理費、修繕積立金にも波及

 

2012年に自民党が選挙で勝利した頃から、都市部では不動産価格は上昇に転じ、
その後も上昇し続けてきましたが、コロナ禍後は、都心部では更に上昇しています。

 

大きな要因としては、
供給側の事情(資材費や人件費の上昇)に加えて、需要側の事情(自宅に仕事スペースを求めるニーズの高まり)もあげられます。
供給側の事情は、マンションの管理費や修繕費用にも及んでおり、管理組合が将来の大規模修繕に備えて積み立てている修繕積立金の積立不足が懸念されています。

 

そのような中、国土交通省は平成23年に公表したマンションの修繕積立金に関するガイドラインを10年ぶりに改定しました。

 

平成23年に公表された専有床面積当たりの目安は以下のとおりです。

改訂後の修繕積立金の平均額は、計画期間(新築は30年以上、既存マンションは25年以上)における目安であり、既存マンションも想定されています。

 

ただし、実用的である分、使い方は、以前のガイドラインよりも少し複雑です。

 

各マンションの修繕積立金は
(計画期間当初の修繕積立金残高+計画期間全体での修繕積立金総額・専用使用料等)を
(総専有床面積×計画期間(月))で割って求めます。

 

 

「計画期間」「計画期間当初の修繕積立金残高」「計画期間全体での修繕積立金総額・専用使用料等」は長期修繕計画を見れば分かりますし、階数、建築延床面積、専有床面積は管理規約や新築時のパンフレット等で確認できます。
(最初は、調べるのに時間がかかるかもしれません)

 

先の事例と同様、
・専有面積70㎡
・10階建
・建築延床面積4,200㎡
・総専有床面積3,000㎡
・総戸数45戸
で、計画期間30年、計画期間当初の積立額5,000万円、計画期間全体で集める修繕積立金総額2億円、専用使用料なしの場合で計算すると以下のとおりになります。

 

(5,000万円+2億円)÷(3,000㎡×12カ月×30年)=231円

 

改訂後のガイドラインでは平均値が335円、事例の3分の2が包含される幅は235円~430円ですので、ガイドラインでは修繕積立金の増額が必要であると判断されます。

 

ただし、マンションは個別性が強く、ガイドラインの数値よりも少ないから不足であると断定できるわけではありません(多いからといってよいというわけでもありません)。

 

建物の形状、規模、立地、仕上げ材、設備仕様や単価、ニーズ等によって修繕工事費が異なりますが、ガイドラインは規模以外の要素は考慮していません。

 

個々のマンションに応じた適正な長期修繕計画が作成されており、適正な金額を計画的に準備していることが重要であり、ガイドラインはその目安として使用しましょう。

 

反対から言えば、長期修繕計画がない、または適正に作成されていない場合は、そもそも判断できません。長期修繕計画を作成し、定期的(おおむね5年以内ごと)に見直すことが大切です。

 

積立不足で見直す場合、集会決議が必要
「均等積立方式」「段階的増額方式」の選択も重要

修繕積立金を見直す場合、通常は過半数の賛成による集会の決議が必要です(管理組合の規約によっては4分の3以上の特別決議が必要)。

新築後(または購入後)一度も修繕積立金を見直していないマンションの場合、均等積立方式であることが多く、積立額が少ないために、期間の経過とともに積立不足が膨らんでいるものと考えられます。

見直しにより積立額を増額する場合、均等積立方式とするか、段階的増額方式によるかも重要な論点であり、これも管理組合の決議で決めることになります。

 

言葉だけをみると、将来増加しない、均等積立方式のほうがよさそうですが、
見直し時に大幅に引き上げる必要がありますし、将来、積立不足が生じれば、結果的に、再度、増額の見直しが必要となります。

 

一方、段階的増額方式は、あらかじめ将来の引き上げも集会で決議できればよいのですが、その都度、決議が必要とする場合、将来の合意形成が難しくなる可能性があります。

 

筆者はマンション管理士ですので、居住しているマンションの長期修繕計画に合わせて、理事であったときに、修繕積立金の引き上げをしたことがありますが、必要であるからこその提案なのですが、負担が増える提案ですので、決して気持ちがよいものではありません。

 

将来にわたり資産価値を維持し、快適に居住するために、建物の修繕や設備の更新は必要です。そのためにも、まずは住んでいるマンション、購入を検討しているマンションの長期修繕計画が適切に作成されているか、必要な修繕積立金を準備できる計画になっているかを、チェックしてみてはいかがでしょうか?

 

 

マンションの購入をご検討の方
マンションの修繕積立金の調べ方が分からない方
修繕積立金の引き上げに備えて、家計の見直し必要をしたい方
がいらっしゃいましたら、是非、私たちFPにご相談ください。

 

 

益山 真一

1971年生まれ。早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。

1級FP技能士、CFP認定者

マンション管理士、宅地建物取引士、消費生活アドバイザー

ダイエット検定1級、食生活アドバイザー2級、健康管理能力検定2級

2003年から2017年まで15年にわたり、國學院大學経済学部非常勤講師

人生を楽しむお金を生み出すことを目的とした執筆、講演活動を展開。

主なテーマは「資産形成・老後資金準備と家計管理」

FPの資格取得・継続教育、宅建の資格取得研修、高校・大学の講義のほか、

投資家向けセミナー、内閣官房内閣人事局主催のキャリアデザイン研修講師、

ファイナンシャルアカデミーのお金の教養講座・経済入門スクール等、

セミナー・研修・講義は2021年3月時点で3083回。

活動理念は「心、カラダ、キャリア、時間、お金」の5つの健康のバランスを考えた最適提案。

 

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