【迷わずに家に帰りたい人の住まい選び】
昨今の都心の鉄道は、利便性を追求するために異なる鉄道会社の路線をつなげて、乗換することなく遠くまで行けるようになっています。そのため、車内でうっかり寝てしまって、起きた時にはとんでもない場所にいるかもしれません。引っ越したばかりの人だと、いつの間にか違う路線に行ってしまって、自宅へ帰るのに迷ってしまう人もいるでしょう。そこで、昨今の鉄道の乗り入れ状況がどのようになっているのか、迷わずに帰宅するにはどうすれば良いのか、今回は東京メトロを取り上げて整理してみました。
各路線の表は東京メトロの時刻表から筆者が調べたものです。行先の種類が何種類あるかの数と行先を載せています。例えば丸ノ内線の新宿駅では、池袋方面には「池袋行」「茗荷谷行」「新宿三丁目行」の3種類の行先の列車があり、荻窪・方南町方面には「荻窪行」「方南町行」「中野富士見町行」「中野坂上行」の4種類の行先の列車があることを意味しています。平日か土休日のどちらかでもあれば数に含めており、本数や列車の種別は特に考慮していません。
●銀座線はシンプルイズベスト
東京メトロは全部で9路線あり複雑な相互乗り入れをしていますが、銀座線は渋谷と浅草を行き来しているだけの非常にシンプルな路線です。
行先もシンプルで、浅草方面は浅草と上野、渋谷方面は渋谷と上野しかありません。途中の上野駅で止まってしまうことはあっても、次の列車に乗れば迷うことはないはずです。
●丸ノ内線は方南町方面へ支線がある
丸ノ内線も銀座線と同様に他と乗り入れはしていませんが、特徴的なのは支線があることです。
行先の種類は銀座線よりも多く、池袋駅から乗る時は6種類の行先があります。中野坂上駅から分かれる支線にも直通運転していることで、行先が増えてしまっています。もし荻窪駅へ行く人が方南町方面へ行ってしまった場合でも、終点まで3駅しかないので、すぐに中野坂上駅まで戻って乗りなおせば、小さな失敗で済みます。
●日比谷線は北千住方面だけ気を付けよう
日比谷線は北千住駅で東武伊勢崎線と相互乗り入れしています。反対の中目黒駅は東急東横線に乗り換えできますが、直通運転はしていません。
日比谷線は北千住方面で東武伊勢崎線に乗り入れる列車に乗ってしまうと、南栗橋駅まで行ってしまう可能性があるので要注意です。南栗橋駅は北千住駅から44キロも離れており、1時間以上もかかるので、遅い時間だとその日のうちに戻ってこられない可能性もあります。中目黒駅から乗る場合は行先が8種類ありますが、途中で横道に逸れていくことはありません。
●東西線は西船橋方面の乗り過ごしに要注意
東西線は中野駅でJR総武線に乗り入れ、反対側の西船橋駅でもJR総武線に乗り入れています(一部時間帯のみ)。また西船橋駅から東葉高速鉄道にも乗り入れています。
東西線は西船橋方面が要注意です。西船橋行に乗れば終点で折り返すだけですが、東葉勝田台行等に乗ると、東葉高速鉄道へ乗り入れて東葉勝田台駅まで行きます。東葉高速鉄道は西船橋駅から東葉勝田台駅まで16キロしかありませんが、運賃が結構高い(660円)ので、もし誤って東葉勝田台駅まで行ってしまったら、京成本線で戻ってきた方が安上がりかもしれません。また通勤時間帯はJR総武線津田沼駅へ乗り入れているので、通勤通学者には便利ですが、深く考えずに乗ってしまった人は驚くかもしれません。
●千代田線は両方向とも行先が豊富
千代田線は北綾瀬駅の一つ手前の綾瀬駅でJR常磐線に乗り入れ、反対方向では代々木上原駅で小田急小田原線に乗り入れています。
北綾瀬方面は綾瀬駅からJR常磐線の取手駅まで直通運転しています。北綾瀬駅に行きたい人が誤って取手駅まで行ってしまうと、綾瀬駅から30キロあるので、戻ってくるのが結構大変です。代々木上原方面は更に要注意です。霞ヶ関駅から乗る場合、行先は10種類もあるので、乗り慣れていない人だとどこの地名か理解しきれないのではないでしょうか。小田急は途中で路線が分かれているので、飲酒後に乗って眠ってしまったら、痛い目にあうかもしれません。まさか誤って特急に乗って箱根湯本へ行ってしまうことはないでしょうが、実際にあったら、もう笑い話にするしかないですね。
●半蔵門線は押上方面の乗り過ごしが怖い
半蔵門線は押上方面で東武伊勢崎線に乗り入れ、渋谷方面で東急田園都市線に乗り入れています。
渋谷方面は渋谷駅で東急田園都市線に乗り入れて、鷺沼駅、長津田駅を経て中央林間駅まで行きます。途中で枝分かれしていないので、迷ってしまうことはあまり考えられません。しかし、押上方面は南栗橋駅や久喜駅まで行ってしまう可能性があります。南栗橋駅は日比谷線北千住方面の場合と同じ終点で、押上駅からかなり距離があります。南栗橋駅と久喜駅は同じ東武でも路線が違います。誤って大きく乗り過ごしてしまった場合、戻ってくるのはかなり大変で、戻ってきたとしても元の半蔵門線に戻って来られるとは限りません。
●南北線は都営三田線との違いを要確認
南北線は赤羽岩淵方面で埼玉高速鉄道線に乗り入れ、目黒方面では東急目黒線に乗り入れています。
赤羽岩淵方面は白金高輪駅で都営三田線と別れるのが要注意ポイントです。目黒駅に記載してある7駅のうち「西高島平」と「高島平」は都営三田線の駅で、「浦和美園」と「鳩ケ谷」は乗り入れしている埼玉高速鉄道線の駅です。目黒線の路線図だけ見ていると迷ってしまうかもしれません。目黒方面はどんなに行っても日吉駅までなので、あまり心配はいりません。ただ、誤って終点の日吉駅に行ってしまい、更に誤って目の前の東急東横線に乗ってしまうと、戻るどころか更に遠くへ行ってしまいます。
●有楽町線は副都心線と間違いやすい
有楽町線は、和光市方面では西武有楽町線と東武東上線へ乗り入れていて、新木場方面は新木場駅止まりですが、途中の池袋駅で副都心線と分かれています。
新木場方面は、池袋駅で分かれる副都心線へ誤って行ってしまわないよう注意が必要です。一番遠い元町中華街駅は池袋駅から37キロあり、1時間近くかかるので、戻ってくるのも一苦労です。和光市方面は行先がかなり複雑で、新木場駅から乗ると12種類もの行先があります。和光市駅からそのまま東武東上線へ乗り入れて森林公園駅まで行ってしまう可能性もあれば、手前の小竹向原駅から西武有楽町線へ乗り入れて飯能駅まで行ってしまう可能性もあります。東武と西武は乗れば乗るほど離れていくので、もし勘違いしてしまったら早めの対処が大事です。
●副都心線の多すぎる行先は嫌がらせ!?
東京メトロで一番最近できた副都心線は、東急東横線と有楽町線をつないでJR山手線の利用者を分散させています。
副都心線の行先は東京メトロ9路線で最多です。渋谷駅から和光市方面に乗る場合、行先は実に14種類もあります。14駅のうち「和光市」「池袋」「新宿三丁目」は東京メトロの駅、「小川町」「森林公園」「川越市」「志木」は東武の駅、「西武秩父」「飯能」「小手指」「所沢」「清瀬」「保谷」「石神井公園」は西武の駅です。沿線の住民でも全ての駅の位置を理解できている人はほとんどいないのではないでしょうか。訪日観光客は迷わずに乗れるとは思えず、もしどの列車に乗ったら良いか聞かれたら、聞かれた日本人も困るでしょう。通勤通学で利用している人でも、お酒が入っていたりおしゃべりに夢中になっていたりすると、間違えて違うところへ行ってしまいそうです。
都心の鉄道の路線網は非常に複雑です。通勤通学の時に遅延や乗り間違いで決まった時間に目的地へ着かないと、ストレスになる人も多いでしょう。それらを回避する方法はいろいろありますが、働く場所や住む場所を選べる人であれば、遅れにくく間違いにくい場所を選ぶことも一つの方法です。酔っぱらっていてもボーっとしていても帰れるような場所に住みたいものですね。
松浦建二(CFP ®認定者・1級FP技能士)
青山学院大学非常勤講師/FPとして個人向けや中小法人向けコンサルティング業務やFPに関する講演・執筆を主に、金融商品の販売代理業務等を行っています。各メディアにて取材協力も行っています。
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